海、大地、空。まるでサンドイッチのようだ。

 久しぶりに朝ごはんを食べに山に登った。毛虫もいないだろうし、気候も抜群に違いない。そのとおりだった。この時期、山を走れば甘い香りがする。植物?花?匂いの元はわからない。しかしこの匂いがたまらなく好きだ。上品でキツすぎず、柔らかい香り。ずっと吸っていたいが、途中でぷつんと消える。缶に詰めて売りたいレベルだ。山頂に着いた。見渡せば、青緑青緑。海、大地、空。まるでサンドイッチのようだ。カラフル過ぎて食欲は湧かへんけど。家から持ってきたパンとカフェラテを頂く。こんなときに写真を撮ってしまう。もっと周りの景色堪能するように過ごさんかい!と自分に突っ込む。それでも写真を撮っている。写真を撮ることに取り憑かれている。ぽけーっと海を見ていると我慢できず、海にも行った。山と海が近いとこういうこともできる。贅沢だ。

 その後海を渡り淡路島へ。いつもどおり、銭湯のお手伝い。タイルを磨く。汗が流れる。ああなんて暑いんだろう!今すぐにでも湯船にジャボンと浸かってしまいたい。そんな気持ちを抑えてすべての掃除を終えた。空き時間が合ったのでまた海を眺めに行く。午前中に登っていた山が見えた。一日で向こう側とこっち側が逆になっていた。まるで自分を鏡で見ているようだ。朝にぼんやりと見えていた土地を、午後に訪れている。なんだか不思議だった。当たり前のように海を超えている。当たり前のように海を超えている。これらは案外当たり前じゃないぞ。今いる場所。住んでいる場所。それらが特殊な場所のように感じてきた。

 数年前の学生時代、僕の関心の先は日本を飛び越えていた。それは今だって変わりないが、この状況下で地元にも関心が向いた。向いたというか、向かざるを得なかった。旅行で海外にもいけない。ましてや仕事もなぜか地元の企業に就職した。地元で一人暮らしを始めたら、知らないことばかりだった。こんな場所がある。こんな人達がいて、こんな団体があるんだ!知ったかぶりの自分を知った。周りを見渡して面白いところがいっぱいあるだろう。そりゃ大都会にいけば山程仕事がある。刺激もある。みんなが行く理由もわかる。しかし僕は小さい範囲で捏ねくり回し捏ねくり回し回して楽しんでいる人たちや地域が好きだ。重箱の隅をつつくように狭い範囲で、ここ数年は過ごして楽しんでいくのかもしれない。