大好きな喫茶店

 大阪の阪急宝塚線蛍池駅から徒歩数分のところに珈琲家族可輪亜居という喫茶店がある。僕はここに何度も足繁く通った。期間で言えば、去年の春頃からになるので一年間くらいになる。ちょうどそのころからスケジュール的にも金銭的にも余裕が出始めたためにできたことであった。何回も足を運ぶとマスターは僕の顔を覚えてくれるようになった。「元気??」とか「今日はいつもより早いなぁ。」とか、他愛もない会話であるがどこか常連になったような気がして嬉しかった。通うと言っても一週間に一回、もしくは二週間に一回という微妙な通い加減であったがマスターはしっかりと僕を認識するようになってくれていた。

 

 

 可輪亜居の中で好きなメニューはサイフォンで淹れるコーヒーとマスターお手製のケーキ。ぽこぽこと沸き立つコーヒーを眺めほぼ毎日作られるケーキを食べ、テキパキと仕事をするマスターを見るのがいつも好きだった。特に一番好きなケーキはショートケーキだった。甘さ控えめのクリームといちごの酸味と甘味がうまくマッチしていて自分の中の理想なショートケーキと言っても過言ではなかった。その他にもマロン、オレンジ、チョコなど。ケーキ屋さんかと勘違いしてしまうクオリティーにいつも驚かされた。

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 また常連さんとマスターの会話に耳を傾けることも楽しんでいた。大体阪神の勝ち負けか競馬、もしくは病気の話である。「今日は勝ったな。」「腰が痛いから病院行かなあかんな」などなど。クスッと笑えるような冗談を飛ばし合っているときは、僕もこっそりと笑っていた。

 店内には多くの写真が飾られていて、毎回行くたびに写真が変わっていた。そのため僕は勝手にマスターが写真好きだと思っていた。ある日、写真についてマスターに聞くとすべてお客さんが撮った写真だということがわかった。写真好きなお客さんに写真を時々貰っては張り替えているらしい。花の写真、海外の写真、時には山の写真。その横にはマスターの独特な文字で書かれたメニュー。(僕は可輪亜居フォントと呼んでいる。) 毎回来ても飽きがこなかった。今回はどんな写真があるのだろう。あれ、前こんな写真があったっけと考えるのも楽しみだった。

 

 

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 先日定期的に行くとしては最後の可輪亜居だった。いつもの冷蔵庫に見たことのないパフェみたいなものが並んでいた。マスター曰く新メニューの試作らしい。たくさんのメニューが有る中でまだ新作を考えていることに驚いた。「ちょっと食べて感想を言ってね」と言われたので、ありがたく頂いた。そして正直な感想をマスターに伝えた。次回、僕が行くとき新作は無事メニューに登場しているのか。非常に楽しみ。

 

 

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  僕は可輪亜居という一つの生活の拠点に通うことができなくなってしまった。そのことはとても悲しいが、これからもどこかで可輪亜居を思い出し、そして時々訪れたい。訪れたときには久しぶりやねとお互いに声をかけて、あのころのいつもの味を楽しみたい。