冷凍室と旭川

 冷凍室に入ることがあった。温度は-20°。周りの人は寒い寒いと言いながら入っていった。そういう僕も寒い寒いと言いながら入っていた。確かに寒かったが徐々に懐かしい気がしてきた。なんだっけと考えていたら、思い出した。2年前の旭川

 北海道好きの友人と冬の北海道を堪能しようと旅行した。ソロで北海道は何度も来たことがあったが冬の北海道は二人とも初めてだった。北海道といえば冬じゃないか!と一致団結した。特急の周遊きっぷを手に入れてたった4日間で北海道を一周した。そのうちの一日の早朝、朝からラーメンを食べたいと友人が言い出した。僕は外の気温と部屋の温度差にやられ体調も悪くて乗り気ではなかった。けど彼がそんなにも言っているからにはついていかないと可哀想だし、付いていくことにした。

 近文駅から早朝6時に僕たちは目的のラーメン屋に向かって歩き始めた。まだ外はうす暗く凍えるほど寒かった。その日は旭川でマイナス24度。関西の瀬戸内で育った僕にとっては厳しく辛い気温だった。歩けば歩くほど顔が痛い。そして鼻の奥が何故か痛い。その時は知らなかったがある程度気温が下がると鼻の中が凍るらしい。そんなことも知らない僕は友人に逐一鼻が痛いことを伝えていた気がする。そんな厳しい寒さと裏腹にラーメン屋までの道のりは美しかった。白くそして柔らかい雪が積り、サクサクと歩けば音がする。まるで雲の上にいるようだった。「凄い。寒いけど。」そんな会話を彼としていたような。


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 ラーメン屋に着くまで20分。夢か現実か分からない真っ白な世界を歩き続けた。ラーメンについてはあまりはっきりと覚えていないが、マイナス20度の世界についてはくっきり覚えている。

 冷凍室に一緒に入った人たちはものの5秒で寒いと言いながら外に出ていった。僕もその声につられて外に出た。しかしもっと長く中に居たい気持ちも湧いてきた。あの時の旭川の銀箔の道のりを思い出すために。