道端に生えている海苔みたいな植物

 いや気怠い。しかし起きなければならない。何故なら自治会の掃除があるからだ。4月から自治会の役員になってしまった。というのもアパートではなく一軒家のようなところに住んでいるために自治会費も払わなければならず、自治会にも参加しなくてはいけないのだ。全く知らない近隣の人に3月頃申し訳無さそうに頼まれたときは、断ることなんてできやしなかった。

 8時頃に無理矢理起床し珈琲をダラダラ飲んで集合場所に向かった。黙々と朝9時に家の周りの草をむしりはじめた。知り合いの近隣住民に交じりながらむしる。僕以外高齢者しかいない。とにかく褒められる。「若い人が役員になってもらって助かる」「若いねえ!」若いだけで褒められるので得した気分だ。同級生が大都市大企業、または地元の公務員で働く中、僕はよくわからない会社に入り、自治会役員として草むしりに参加している。よくわからない会社に入ったことは今も大後悔しているが、草むしりすることはむしろ面白いと感じる。おそらく同世代で自治会役員をしている奴なんていないだろう。それがどうしたと言われるかもしれないが、ここに住んでいる醍醐味だろうなと考えている。道端に生えている海苔みたいな植物を徹底的に剥がして、近隣のおばあちゃんが育てているみかんの木に付いたアブラムシをスプレーで退治していたら終わった。

 次の日の昼頃電話が鳴った。小学校の同級生。今は遠くに住んでいる。電話に出ると開口一番「サッカー観に行かへん?」良いじゃんと承諾。彼はサッカーを見るためだけに地元に帰ってくる。帰ってきては僕か家族を誘ってはサッカーを見に行く。僕としても小学校からの友人で定期的に会えるのは本当に嬉しいし、もうここまで来ると家族のような接し方をできるので嬉しい。人間の壁をほとんど感じない。

 チケットは好きなやつ買っていいいよと言った。サッカーを見に帰ってきている彼の好きなようにしてほしいという気持ちと自分の選択権を人に預けることで経験したことないような結果が生まれるかもしれないという好奇心が勝った。老後資金だとか年収だとか、全く興味がない。「将来」が気にならないんだろうなと自分でも気付いてきた。今欲しいと思えば買うし、今したいと思えばする。高いだとか損得とかで考えていたら、逃してしまうことなんてなんぼでもある。今のことしか考えられないんだよね〜と考えている。自分で稼いだ金の選択を友人に託した。彼の好きなようにしていい。一種のギャンブルのような感覚だ。そして今回、彼は一番高い席を買ってきて笑った。彼の行動は全て分かると思っていたが、今回ばかりは予想外だった。「高ない???」と文句も愚痴も含んだ返信をしながらもニヤニヤしている。非常に楽しみな予定ができた。